METライブビューイング「ばらの騎士」新演出

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12日に《MOWIさいたま》で、メトロポリタン歌劇場のライブビューイングなる映画を始めてみた。2017年5月13日に現地で上演されたものである。さいたま市にある新都心駅のすぐ前に最近できた、娯楽コーナーにある映画館が8つ入った建物のうちの一つで、200人ほどの定員だろうか。巨大なスクリーンに上質なスピーカーが備わっていて、美しい画像と大きすぎる音を楽しませてくれた。
数年前からMETライブビューイングは首都の数箇所でみられたがが、今日が初めて。フレミングとガランチャ出るのに魅かれて夫婦で重い足を運んだ。入場料は3600円、上演時間は4時間24分。.
フレミングもガランチヤも久しぶりで、それなりに年を取っていた。当然だが、大画面にアップで映るのだから隠しようもない。顔の皴さえ数えられる。これは予期せぬことだった。ガランチャのオクターヴィアンは17歳ぐらいの筈で、元帥夫人だって50歳にはならない。ガランチャもフレミングもこれが最後の役とインタービュウでいっていたが当然だろう。
その無理を割り引くとよい演技だった。歌は完璧。ゾフィーのモーリーは今回が初めてだった。17歳の乙女とは無理だったし、二人とは大分格がちがっていた。オックス男爵はこれまで見た《ばらの騎士》の男爵とは体形が違い、好男子、そこからはコミカルなイメージが感じられない。これは演出のせいかもしれない。
普通はこの演劇は19世紀末の後期ロマン派の出来事とされているが、今回のカーセンの演出は第一次大戦直前の出来事とされ、どの幕にも一度は北朝鮮のミサイル発射台のような大砲が現れてきた。演劇の主題である元帥夫人の若さの消失の悲しさは背後におしやられ、大戦前のドタバタが主題となって私のこのオペラへの期待を裏切った。一幕の夫人の寝室へ訪れる俗人の密集は仕方がないにしても、2幕の男爵の決闘騒ぎ。さらには3幕がキャバレーでの男爵がオクターヴィアンと繰り広げるドタバタ。最後は老人を無視しての若者の寝室での振る舞い。どれもこれも大戦前の腐敗した世相のみが強調され、元帥夫人の老いの悲しみはどこかえ飛んで行ってしまった。
カーセンはモダンな演出をする人、いつも驚かされるが、節度は失わない。私の評価はそれなりにあったが、この演出ではシュトラウスのオペラの意図が全く消されていた。演出が要求するのだろうが、音楽のテンポも速く、しんみり楽しめる場面がなかった。
これで、メトのライブビューイングに懲りたとは言わないが、次回への時間が少し遠くなったとは言えそうだ。

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