ヘンデル(13)オラトリオ「ベルジャザール」(H39)

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画像化されているオラトリオですルネ・ヤコブス指揮「ベルジャザール」。(日本語の字幕はありません。)

旧訳訳聖書ダニエル書からとったもので、紀元前553年頃の出来事。割と新しい話です。ベルジャザールは新バビロニアの最後の王ネブカドネザルの子ナボニドゥスの子供ですが、遠征の多い王から、国内の治世をまかされていました。旧約聖書ダニエル書に最後のバビロニア王として記録されています。最後はペルシャ軍にとらえられますが、聖書ではバビロンの陥落の夜に殺されたとみられています。。
ベルシャザールが1000人の貴族や側室とともに宴会を開いている時突然人間の手が現われ、壁に字を書きました。ベルシャザールは恐れをなし字が読める者を探した。誰も読めず一人、ダニエルという神官長が進みでた。彼の解読によれば「神は父王ネブカドネザルに権勢と栄光を与えた。しかし彼は尊大で横暴な振る舞いをし王位を追われた。彼は野獣の振る舞いをしたことを、雨にうたれて初めて神がこの世を統べることを知った。べルジャザールはこれを知りながら、なお神を知らず、祭具で酒をのもうとしたので、神はこのことの非をおしえようとして、あの字を書いたのです、とダニエルは示した。その夜べルジャザールはころされた。
この話は私が感じたようにロマンチックな話題とみえてハイネが詩を書いています。
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真世中が刻一刻と近づいてくる、
バビロンの都は静まりかえっている、
ただあの聳え立つ王の居城だけは、
たいまつが燃え、王の家臣がひしめいている、
あの聳え立つ城の、王の広間には
ベルシャザール王が饗宴を催している、
家臣たちがきら星のように居並び、
盃に注がれた極上の酒を飲み干している、
家臣たちは盃を合わせ、笑いさんざめき、
その雰囲気は気難しい王にも心地よい、
王の両頬はつやつやとかがやきはじめ
酒を飲み干すにつれて不敬のちからが湧いてくる、
王はこの盲目的な気力がなすがままに
神を冒涜する不敬の言葉をまき散らす、
王ははばかることなく我が身を誇り、神を冒涜する、
家臣たちは王にやんやの喝采をあびせかける、
王は勝ち誇った目つきで命令をだすと、
小姓がいそいで退出し、すぐに戻ってくる、
王は数々の黄金の装身具で頭を飾りはじめる、
それはエホバの神殿から奪いとった品々なのだ、
王はいかにも横柄な手つきで聖杯をつかみ、
それに美酒をなみなみと注がせる、
王はどの盃もことごとく一気に飲み干し
泡だらけの口のまま大音声に呼ばわる、
「エホバよお前をとこしえに侮蔑しようぞ」

われこそバビロンの王なのじゃ!」
だがこのいまわしい言葉を言い終わるやいなや
王の胸はいい知れぬ不安におののきはじめた
だらしない哄笑のざわめきがぴたりとやみ
大広間のなかは墓のごとく静まり返った、
あそこに!あそこに!白い壁に
人間の手が現れ出たのだ、
その手は白い壁に書き綴っていく
それは炎の文字を書き印し、また消えていく
王は放心した目付きで座り込み、
蒼白となって、膝をがくがくふるわせている
家臣たちは骨の随までふるえあがり、
シーンと静まり返って物音ひとつ立てはしない、
博士たちがつれて来られしたが壁の炎の文字を
だれひとり解き明かすことはできない、
だがベルシャザール王はその夜のうちに
彼の家臣たちによって殺されてしまった。

シューマン「ペルシャザール王」(作品)57(1940年)
ハインリッヒ・ハイネ作詩「喜多村道彦訳」
ユダヤの預言者ダニエルによって文字は「メネ・メネ・テケル・ウバァルシン」をダニエルはこう解釈したとオラトリオ中にはあります。
メネとは、あなたが侮ってこられた神があなたの治世の日数を数え、それを終了させたということ、テケルとは、あなたが天秤にかけられて計量され「不足」と判定されたとおいうこと。ペレスとはあなたの王国が分割され、メデイア人とペルシャ人に与えられるということ。

オラトリオでは王子の殺害は何ものかの手で行われたとありますが、オラトリオではキュロスの手にかかったように聞き取れます。キュロスは次の支配者ですから自然です。

オラトリオの台本(ジェネンス)ではこう書かれています。
王子ベルジャザールの母であるニトクリスが世の変りを一般論として嘆き、
「バビロンの最後は近いらしい.何とか避けようとしてきたが、私の力など知れたものー
あのヘブライの預言者がその知恵を持って私の弱々しい歩みを支えてくれなかったならば、さあ、あの方が来られた、その落ち着いた物腰の中に知恵と善咎宿っていることは一目瞭然。」
また、キュロスはこう述べています。
「安心せよ、いかにあの暴君が城壁の内にあって安穏に見えようとも、わたしには妙案がある。それは天からの閃きによるもので(夢はしばしば天よりふる)彼奴の力は根こそぎになるだろう。我が胸のこの思いはあまりにも強く、そうとしか考えられないのだ。」
このように王子を取り巻く環境は風雲急をつげている。

ここに至る状況は旧約聖書にはありません。しかし祖父王であるネブカドネザルの夢として表現されている。(ダニエル予言書第2章全篇)「含意は盛者必衰の理と交代・変革の理」である。第二は人類史をあらわす「像」とは別の次元に属する「石」によって、「変革きわまりない、うつろいやすい人類史もまた、完成を見る、」の意である。第三は、人類史を完成させるこの「石」、「石」ともなるべきキリストであり、キリストは「分裂の王国」の時代におとづれて永遠まで続く、滅びもうつろいもしらね神の国を打ち立てる、の意である。
この文を具体的に示したのがニトクリスとキュロスのオラトリオでの宣言だとおもいます。
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オラトリオは画像化されて発売されています。
DVDルネ・ヤコブス指揮ベルリンRIAS古楽室内オケ
ここではオペラのように歌手が独立に歌いますが、演技らしいものはありません。また歌手は相手に歌いかけることもなく、客席に向かって歌っています。舞台装置は簡単ですがあり、照明も使われます。舞台は3段に別れ合唱団も歌手も適宜移動します。字幕があるのもオペラ同様です。
CDはアーノンクール指揮コンツエルトムジークのものを聞きましたが、音楽はこの方が圧倒的に良い。バロックは古典の均衡をドラマチックではなく、滑かな会話として解決していると私は思います。ヤコブスの演奏はゴツゴツしてロマン派を思わせます。

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