新国(初台)の「トロヴァトーレ」

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プロの冒頭に演出者の弁があり、珍ししことなので、忙しい開幕直前に読みました。そうでなかったら演者につきまとう亡霊に危疑の念をいだいたことでしょう。思えば落語に現身の人が死神を背負って生きる話がありますし、これは新しい表現方法ではなかったでしょう。ミュンヘンのガルテンプラッツ総裁ウルブリッヒ・ピータースの演出で、それなりに成功していたように思いました。ただ、この曲は「死の暴発」だけがテーマではないので、違和感のある場面も目につきました。例えば「アンビル・コーラス」3部形式A/B/Aですが、3番目のAが省略されていました。演出者のいうように、ジプシーを単に貧者の集団として見た面が強調されていたのでしょう。そうでないのは「カルメン」を見た方なら誰でも知っているでしょう。
「死の暴発」とのみ捉えるにはこの曲は無理です。またマンリーコの山城軍が鉢巻をしていたことや旗が日本独得のものだったこと、服装が軍装のように赤に統一されていたことに異見もありました。しかしそのおかげで舞台装置は整理され、緊張感あふれるものとなっていました。これは初台では珍しいことです。

歌は十分楽しめました。演出の趣旨を生かしたせいか、主役達のソロは若干そっけない感じを抱きましたが、そのなかでレオノーラを歌った、イヴォーリは控えめな表情ながら悲しみが十分感じられ、好演でした。アズチューナが目立つのはいつの場合もそうで今回も例外ではありませんでした。合唱団は好演です。目立ったのはオーケストラでこの手の曲は東フィルにとってお手の物だったのでしょう。響きのよい会場いっぱいに音が響きわたり、オーケストラだけより、楽しめたのは予想していなかったことでした。
ピータースが総裁をやっているガルテンプラッツの歌劇場は一度20年前にいったことがありますが大きさは新国立の半分以下、演目は「ルチア」でしたが、古いけど貧相で、それと比べると初台は立派な一流歌劇場です。今日のレヴェルのオペラがやれれば、外国の2流オペラ以上です。3階は1万円そこそこで聞けますから、お釣りがきます。(政府が予算を削りませんように)
今年はオペラの厄年で、主役が来日しなかった公演が相次ぎ、しかも、NHKホールで6万円も取られたそうです。それにくらべれば、ここは良い会場で、夢のような3時間でした。
ただ3階の1列目は今日のように「舞台の前で演技するのが多い」と見えないのです。体を動かさないようにというアナウスは獄です。
5月に脳梗塞をやって今日は初めてのオペラでした。3階にたどりついたとき「ああ幸せ」思わず呟きましたが、これが落とし穴、客席の下り階段の段差が駅以上に大きく、つまづきました。ところが捕まる手摺りがないし、通路脇の椅子の背は引っ込んでいてとどかないのです。怪我はありませんでしたが、冷やせものでした。一考が必要です。

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