ヘンデル(8)傑作「アリオダンテ」(H34)

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                         jジネウラ
[アリオダンテ」は恋する騎士の名前で女性が演じます。「シネウーラ」の恋人で、横恋慕するポリネッソ(これも女性)が演ずる)舞台では女性3人が入り組んでの恋の鞘当で馴れないとwからなくなります。変化に富んで筋として面白い のですが。現代性を感じさせる心理劇です。
「オルランド」が英雄オペラなら、「アリオダンテ」は「反英雄オペラ」といえます。この言葉はウイントン・デイ―ンが著書「オペラ・セリア」で提案している名称です。「反英雄オペラ」はヘンデルが全生涯にわたってかいたもので、嘲り、パロデイ、風刺といった要素が台本に際立っているオペラです。他には「英雄オペラ」「魔法オペラ」があります。アリオストはボイアルドの「恋するオルランド」の続きの形で「狂ったオルランド」を書きました。その「狂ったオルランド」の第5歌、第6歌に出てくるのが、今日の「アリオダンテ」の話です。
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            ヘンデル
8世紀、スペインに上陸したイスラム教徒は北上し、スペインを制圧し、フランスに攻め込む気配を示します。571年メッカで生まれたマホメットがみるみる世界にイスラムの教えをひろめ、スペインに侵入したわけです。彼らをスペイン国内に封じ込めたシャルマーニュはキリスト教世界の偉人ですが、この事業にてがらがあった武将の一人がオルランドでした。この間の出来事は口承で伝えられましたが、15世紀になって優れた文章家があらわれ、叙事詩として表現されました。ルイジ・ブルチトマッテオ・マリア・ボイアルドそれにルドヴィコ・アリオストです。第5歌ダリンダ姫がいうには「ギネビア姫(オペラのジネウーラ姫)には騎士アリオダンテが恋人にいます。だからボリネッソ公爵がおもいをかけても無駄だ]と。これに対しポリネッソはダリンダに頼んで、ギネビア姫に化けてもらい逢引きする。彼女は彼が好きなので断れなかった。そう言われても実行、この様子をアリオダンテにひそかに見させた処、策略にかかり、彼は絶望し、海に飛び込みます。アリオダンテの弟がこれを見ていて、兄を失った原因となった姫を糾弾。決闘。掟では決まった相手がいるとき、それ以外の男と情交した場合、死罪、誰かが弁護にたったときには決闘。ところがルルカーニオが強いのでだれも弁護にたたない。そこへ謎の騎士が現れる。リナルドです。リナルドは決闘の差し止め役。(オペラには出ない)彼はボリネッソの悪巧みを暴露し、ボリネッソと決闘。リナルドが勝つ。
これはオペラでは現代的に変わっています。リナルドをオペラでは省いたことにも原因はありますが、オペラ台本では次のように表現されています。ルルカ二オ「天は正義に微笑むだろう。さあジネウラが無罪だという擁護者よ、この戦いの場に降りて来い。」ポリネッソ「ルルカ二オ、彼女の擁護者はすでにここにいるぞ。そしてこの剣はジネウラの告発者の嘘を暴き、そいつを倒すための強い味方なのだ。」オペラではこんな会話が劇をすすめます。つまりポリネッソの嘘は暴かれず、ポリネッソが正義の振りをすることが劇をすすめます。原文より事態は複雑で現代的です。そうすることで自分の行った策略を隠し、王にいい顔をできるからです。アリオダンテが出てきて復讐するのでは単純な構図になります。結果はポリネッソが負け、真実が明らかにならないうちに主役が死んでしまう。そこで王女の擁護者として王が登場することになる。これが原本では犯人がリナルドに簡単に殺され決着がついています。  (真実を決めるための代理戦争はこのあとワグナーの「ローエングリン」でもでますが、ヘンデルは100年前にそれをオペラにとりこんでいるのは興味深いことです。)
そこへ死んだはずのアリオダンテが現れる。アリオダンテの登場は、既に悪の敗退は行われていますから、その意味は王の登場を阻止することでしかありません。真実はアリオダンテにダリンダの口からあかされます、オペラでの劇の進行は極めて自然です。

台本を改めてグローブのオペラ事典から紹介すると次のようです。
中世の名作アリオストの「狂ったオルランド」から(1516年)
スコットランド王
アリオダンテ;家臣の公爵
ジネウーラ;王の娘、アリオダンテの許婚者
ルルカニオ;アリオダンテの弟
ボリネッソ;オーバニール公爵
ダリンダ;ジネウーラの侍女
オドアルド;王の寵臣

エ。
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エジンバラが舞台。「アリオダンテ」は公爵。 彼の恋人はジネウーラです。「オルランド」で使ったアリオストの作「狂乱のオルランド」の4-6編である。
第一幕 ダリンダは侍女。ジネウーラの私室へポリネッソ公爵がつかつかとはいってジネウーラに愛の告白をするが、うけいれられない。彼女はアリオダンテが好きだから駄目だとダリンダがポリネッソに教え、自分の気持ちをほのめかす。ポリネッソはダリンダにジネウーラへの変装をたのむ。ポリネッソはアリオダンテを破滅させることを誓ったからである。
宮廷の庭ではアリオダンテがジネウーラに愛を誓う。王は二人を祝福し、明日結婚式を挙げるよう部下に指示する。ポリネッソはダリンダが好きなよう装う。自分を侮辱したジネウーラに仕返しをしたいから手伝ってくれと言葉巧みに、口説き、ダリンダにジネウーラの服を着せる。その夜自分をジネウーラの部屋に連れて行くよう頼む。ダリンダは気が進まず、しかしポリネッシの恐ろしい企みにもきづいていない。
アリオダンテの弟ルカ二オはダリンダに愛を打ち明けるが、ダリンダは相応しくない、と拒否。
アリオダンテとジネウーラは美しい谷間で、村人の踊りを楽しんでいる。
第2幕はアリオダンテとポリネッソの二人が会っていることからはじまる。ポリネッソはシネウーラを口説いたとアリオダンテに暗示し、扉からシネウーラに変装したダリンダを出す。アリオダンテは裏切りと勘違いし、自殺を試み、、崖からとびおりる。これが噂となる。ジネウーラは聞いて気を失う。陰でポリネッソの行動をみていたルカニオはシネネウーラの不倫が原因という。王は娘のふしだらを責める。
第3幕アリオダンテは森にいる。死なせなかった神をのろう。そこへダリンダが口封じにやとったポリネッソの刺客に追われて逃げてくる。アリオダンテは彼女を救う。ポリネッソの裏切りをしったダリンダは真実をアリオダンテにしらせる。
宮殿ではシネウーラは不貞の罪で王の前に引き出される。ポリネッソは偽善たっぷりに出来事をのべる。ルカ二オにたいし、シネウーラを弁護する。シネウーラの守護騎士としてポリネッソが名乗りをあげ、ルカ二オと競技場で戦う。ポリネッソは傷つき、さらに王が代る。そこえ覆面の騎士が登場、これこそアリオダンテであった。彼はダリンダを許してもらえるなら、「真実をいう」といったところに、ポリネッソの死が告げられ、王は一同に祝賀を命ずる。ルカ二オがダリンダにプロポーズし受け入れられる。獄中のシネウーラに王とアリオダンテがあらわれ、無実を告げ、2組の恋人の結婚式となる。

傑作との評価が今は高い。ヴェルデイを知った現代人にも通じると私は思います。筋がわかりやすく、音楽もよい。
しかし当時は受けなかった。1735年のことです。これは貴族オペラができたころの作品でヘンデルとの対立が激しく、客席はガラガラだったそうです。
1735年のことです。
DVDアランーカーチス指揮今プレッソ バロックの演奏(dynamic社)(2008)
CDミンコフスキー指揮ルーブル音楽隊ゾフィ・オッター他

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